嫌われ者に恋をしました

「違うわよ!」

「違うね~」

「確かに、商品名は揚げ玉でしたね」

「なっ、雪菜まで!」

 まさか、雪菜まで参戦してくるとは思わなかった。打ち解ける努力をしているんだろうか。

「あらっ!雪菜さん、わかってるじゃない」

「ホント~」

「いつお嫁に来ていいわよ」

「俺の嫁でもいいよ~」

「そ、それは……」

「雪菜、本気にしなくていいから」

 雪菜はまだ少し緊張しているようだったが、それでもだいぶ頬に赤みが戻っていた。

「揚げ玉より天かすの方が旨いよ」

 突然父親がポツリと言ったから、一瞬シンと会話が止まった。

「……ほらー、天かすじゃん」

「お父さんは口出さないで!私は揚げ玉が好きなの!」

「で、結局揚げ玉の他には何入れてたの~?」

「お好み焼きの材料ねえ……、キャベツ、豚バラ、揚げ玉、……あとは紅生姜。生地は粉だけじゃなくて、山芋をすって入れるでしょ。あと何かあったかしら……そんなもんかしらねえ」

「あ!山芋か。忘れてたな」

 そういえば子どもの頃、山芋をするのをよく手伝わされた。ぬるぬるして手が痒くなるから悠人とその役目を押し付け合った気がする。

「なになに?一緒に作ったの~?」

「まあね、この間」

「山芋を入れると生地がフワッとするから、今度は入れて作ってみてね、雪菜さん」

「はい」

 雪菜が微笑んでうなずいたから、隼人は少しほっとした。
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