嫌われ者に恋をしました
地下鉄に乗ってもバスの中でも、雪菜は懐かしむように周りを見てはため息をついていた。
「どうしたの?」
「……いろいろ変わってしまったと思って」
「そりゃ、10年もたてば変わるさ」
「そうですよね」
雪菜は仕方ない、という表情で笑った。
バスを降りると抜けるような青空が広がっていた。時折吹き付ける乾燥した冷たい風が冬を強く感じさせる。
寺の前の花屋で仏花を買い、入り口で手桶に水を取って墓に向かった。
「場所、覚えてる?」
「はい」
10年ぶりとは思えないほど雪菜はサクサクと歩いて行った。
「……ここです」
かなり荒れていることを予想していたが、たどり着いた墓は草も抜かれてきちんと掃除されていた。
「誰か掃除してくれてるのかな?草むしりとか雪菜の親戚がやってくれてるの?」
「お寺の方が綺麗にしてくださっているんだと思います。最後に来た時、お寺の方から祖父母が管理費を払わないと言われて、今は私が管理費を払っているんです。そんな祖父母がお墓を綺麗にするとは思えませんから」
「……それは、そうだね」
そういえば、雪菜の祖父母はガラが悪いんだった。少なくとも雪菜の目にはかなり怖く映ったらしい。
残っていた枯れ草を取り除きながら聞いた。
「その祖父母は今どこにいるの?」
「わからないんです。連絡が来なくなって、こちらからも連絡が取れなくなってしまって」
「それは、なんだろう……。夜逃げとか?」
「なんとなくですが、そんなところだと思います」
「ふーん」
だとしたら、雪菜に借金を押し付けなかっただけまだマシか。