嫌われ者に恋をしました

 地下鉄に乗ってもバスの中でも、雪菜は懐かしむように周りを見てはため息をついていた。

「どうしたの?」

「……いろいろ変わってしまったと思って」

「そりゃ、10年もたてば変わるさ」

「そうですよね」

 雪菜は仕方ない、という表情で笑った。

 バスを降りると抜けるような青空が広がっていた。時折吹き付ける乾燥した冷たい風が冬を強く感じさせる。

 寺の前の花屋で仏花を買い、入り口で手桶に水を取って墓に向かった。

「場所、覚えてる?」

「はい」

 10年ぶりとは思えないほど雪菜はサクサクと歩いて行った。

「……ここです」

 かなり荒れていることを予想していたが、たどり着いた墓は草も抜かれてきちんと掃除されていた。

「誰か掃除してくれてるのかな?草むしりとか雪菜の親戚がやってくれてるの?」

「お寺の方が綺麗にしてくださっているんだと思います。最後に来た時、お寺の方から祖父母が管理費を払わないと言われて、今は私が管理費を払っているんです。そんな祖父母がお墓を綺麗にするとは思えませんから」

「……それは、そうだね」

 そういえば、雪菜の祖父母はガラが悪いんだった。少なくとも雪菜の目にはかなり怖く映ったらしい。

 残っていた枯れ草を取り除きながら聞いた。

「その祖父母は今どこにいるの?」

「わからないんです。連絡が来なくなって、こちらからも連絡が取れなくなってしまって」

「それは、なんだろう……。夜逃げとか?」

「なんとなくですが、そんなところだと思います」

「ふーん」

 だとしたら、雪菜に借金を押し付けなかっただけまだマシか。
< 377 / 409 >

この作品をシェア

pagetop