嫌われ者に恋をしました
雪菜のイメージとは全く異なる祖父母。その娘である雪菜の母親はどういう感じだったんだろう。隼人はじっと墓を見た。
墓参りに来たのは雪菜の気持ちの整理のためだったが、本当はそれだけではない。
一度ちゃんと挨拶をして許しを得たかった。もちろんこちらの一方通行だけど。自分に対する儀式のようなものだと思う。
墓に水をかけ、線香と仏花を供えると二人で並んで墓の前に立った。
雪菜が黙って手を合わせたから、隼人も目を閉じ手を合わせて、心の中で雪菜の母親に話しかけた。
『お母さん、初めまして……。雪菜さんとお付き合いさせていただいている松田と申します。
雪菜さんは本当に優しい人です。思いやりがあって、いつも支えてくれる優しい人です。俺にはもったいないくらい素敵な人です。
俺はあなたが雪菜さんを叩いていたことは、絶対に許せません。
もしかしたら、雪菜さんはあなたの反面教師で優しい人になったのかもしれませんが、あなたが叩いても叩かなくても、雪菜さんは人の痛みがわかる優しい人になったと思います。
……すみません。偉そうなことを言いましたが、俺もたいしたことはできません。
俺にできることは、雪菜さんに普通の毎日を笑顔で過ごしてもらうことくらいです。でも、雪菜さんが笑顔でいてくれると、俺は最高に幸せなんです。
俺は雪菜さんを愛しています。
微力ですが、雪菜さんが自分の気持ちに正直に、毎日少しでも幸せを感じて過ごせるように努力します。
絶対に不幸にはしません。約束します。俺は雪菜さんを一生守ると誓います。
だからお母さん、雪菜さんを俺にください。雪菜さんとの結婚を許してください。お願いします。……まだ、本人から承諾は得ていないんですけどね』
なんだか最後の方だけカッコ悪くなってしまった。
でも、許しを得るお願いはした。やることはやったさ、と思って目を開けると、雪菜がじっとこちらを見ていた。
「隼人さん、ずいぶん長くお祈りしていましたね?」
「お祈りっていうか、お母さんにちょっとご挨拶をね」
「……ご挨拶、ですか?」
「うん」
雪菜は不思議そうな顔をしたが、隼人はフッと微笑んでごまかした。