嫌われ者に恋をしました

 お母さんのお墓の前に立って手を合わせても何も浮かんでこなかった。でも、頑張って少しずつ話しかけてみた。もちろん、冷たい石から返事はないけれど。

『お母さんが死んだのは私のせい?』

『……』

『でもっ……、私だってやりたいこととか、言いたいことくらいあるもん。お母さんがカッとなって出て行ったのがいけないんじゃない!』

『……』

『一人にしないでなんて……、お母さんは、私が邪魔だったの?それとも愛していたの?』

『……』

『もう、今となってはわからない。でも……、生きていてもたぶんわからなかったよね?お母さん……』

『……』

『私の彼は素敵でしょう?』

『……』

『人と関わることは怖いことじゃなかったよ。傷つくこともあるけれど、それ以上に人を信じられるって素晴らしい。力がみなぎって、傷ついても乗り越えられるの。私は変わったよね?お母さん』

『……』

『お母さんは過去の人なんだね?私の中にいるお母さんは10年前から変わらない。でも、私はこんなに変わった。私の時間は止まってると思ってたけど、とっくに動き始めてたんだね』

『……』

『私の時間を動かしたのは、この人だよ。隼人さんっていうんだよ。私はこの人とずっと一緒にいたい。私は彼と一緒に生きていくね』

 目を開けると目の前には変わらず灰色の墓石があるだけだった。でも、少しは言いたいことが言えたかな。
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