嫌われ者に恋をしました

 横を見上げたら隼人はまだ手を合わせて真剣に祈っていた。何をそんなに真剣に?

 雪菜がじっと見ていたら隼人は顔をあげた。「ご挨拶をしていた」なんて、ずいぶん丁寧なご挨拶を……。

「お母さんと話、できた?」

「……はい」

「もっとお話しする?」

「いえ、大丈夫です」

 チラッと墓石を見たら、お母さんに私たちの仲良しぶりを見せつけたくなった。

「……ぎゅーってしてほしいのです」

「ここで!?」

 隼人は少し驚いた顔をしたが、雪菜がうなずくと少し微笑んで抱き締めた。隼人の腕に包まれて雪菜は目を閉じた。

『お母さん、私が甘えるなんて信じられないでしょう?私、甘えられるようになったの。この人と一緒にいると暖かくて本当に幸せなの。私この人に愛されてるの!見て見て!いいでしょう?』

 そこまで考えたら、なんだか自分がバカみたいに思えてきた。

「どうしたの?」

「見せつけたのです」

「?」

「お母さんに私の彼、素敵でしょ!って見せつけたのです」

「……雪菜、お母さんと一体どんなお話をしたの?」

「それは、秘密です」

「ふーん……」

 隼人から離れてもう一度墓石をじっと見た。

『もう行くね、お母さん。私は愛する彼と一緒に行くよ。お母さんとはさようなら。
 でも、いつでも思い出してあげる。辛かったことを思い出すのはもう怖くない。だから、さよならしても一緒にいるよ、お母さん』

 いつまでもお母さんのことを自分のせいにしていても仕方がない。そう思ったら、新しい空気が肺に入ってきたような気がした。
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