嫌われ者に恋をしました
雪菜が住んでいたマンションが県庁や市役所のすぐ近くだったから、隼人はまた驚いた。
「こんな都会に住んでたの?」
「都会、でしょうか?それとも私のこと、すごい田舎者だと思ってました?」
「いや、そういうわけじゃないけど。だって、デパートとか繁華街のすぐそばじゃん」
「母が国分町(こくぶんちょう)という繁華街で働いていたので、繁華街のそばに住んでいたんだと思います」
「ふーん」
住んでいたマンション自体は変わっていなかったが、コンビニができていたり、古い寿司屋がなくなっていたりして、周囲は少し変わっていた。
「どう、変わってた?」
「基本的には変わってないです」
「そっか」
ふと見ると、道路の向こうの遠くに本屋が見えた。私の味方をしてくれたのに、迷惑をかけてしまったあの本屋さん。
雪菜がじっと本屋を見ていることに気がついて、隼人が雪菜を覗き込んだ。
「あの本屋って、もしかして雪菜が言ってた本屋?」
「あ、はい……、そうです」
「行ってみる?」
「え?」
どうしよう。でも、もう10年以上経つし、私のことなんか誰も覚えていないはず。行ってみようかな。
「……行ってみます」
「うん、行こう」
隼人は微笑んで雪菜の手を取った。
あれから一度も近づかなかった……。なんだかすごく緊張する。雪菜が隼人の手をぎゅっと握ると隼人は優しく握り返してくれた。
本屋に近づいてガラス越しに見えた姿に、雪菜はハッと目を大きく開いて口に手を当てた。
「……おじさん」
「おじさん?」
「えっと、この本屋の店主の方です。スタッフルームで本読んでいいって言ってくれた人、です」
おじさんはすっかり白髪になっていた。でも面影は全然変わっていなくて、なぜか涙が湧いてきた。