嫌われ者に恋をしました
「会いに行ってみる?」
どうしよう。でも、私のことなんか覚えてないと思うし、覚えていても怒っているかも。
……でも、あの時のお礼を言わないといけない。あの人は私を助けてくれたんだ。
「行ってみます」
ドキドキしながら自動ドアを開けて店の中に入った。おじさんは「いらっしゃませ」と言ってチラッとこちらを見ると、すぐに書き物をしていた手元に視線を戻した。
やっぱり覚えていないかな。そう思った時、おじさんは何かを思い出したようにまた顔をあげて雪菜をじっと見た。
ドキドキして言葉が出てこない。おじさんは口元に手を当てたが、今一つ思い出せないようで、雪菜を見つめている。
「……」
「……君、アレだよね?昔よくうちに来てたよね?」
「その節は大変ご迷惑をおかけしました」
雪菜は頭を下げた。
「ああ!思い出した!名前忘れちゃったけど、あの子だよね?頭のいい子」
「……えっと?」
何だろう、その変な覚え方。もしかして違う子のことを言っている?
「えっと、あの時はスタッフルームで本を読ませていただいていたのに、母がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「うんうん、いいのいいの!あれから全然顔出さないから、みんなで心配してたんだよ」
「……すみませんでした」
怒ってなかったんだ……。その上心配していたなんて。本当にごめんなさい。
急におじさんが優しかったことを思い出して涙がこぼれてきた。
「ああ、そんな!泣くようなことじゃないよ」
「すみません……」
「うんうん、元気そうで良かった。君、全然変わらないねえ。……この人、ご主人?」
おじさんは隼人に目をやった。