嫌われ者に恋をしました
「いやいや、お店の人の言う通りどうかしてるよ!でも、子どもの頃の雪菜がどんな感じだったのか聞けて良かった。いつも俺ばっかりネタにされてるからさ」
「……隼人さんはいたずらエピソードが多すぎるのです」
初めて隼人の家族に紹介された後、何度も隼人の実家に連れて行ってもらった。行くたびにアルバムを見せてくれて、お母さんたちが大げさに話をするから本当に楽しい。
「あいつらにお土産買って行かないとね。きっとうるさいよ」
「そうですね」
そう言って顔を見合わせて笑った。
昼はそれなりに有名な牛タンのお店に行ってみたが、混んでいる時間ではなかったせいか、すぐに食べられた。
牛タンは固いイメージがあったけど、もしかしたら私って安い牛タンしか食べたことなかったのかも。柔らかくてすごく美味しい!
「うまい?」
隼人が嬉しそうに聞いてきた。
「はい」
「すごくうまそうな顔してるから」
「ふふっ、隼人さんも美味しそうな顔してますよ」
美味しいことも、それがお互いに伝わったことも嬉しくて、雪菜はホクホクした笑顔を見せた。
こんな風に美味しいって伝えられるなんて。美味しい。楽しい。つらい。悲しい。私はたくさんの感情を持っている。それを怖れず自由に感じて、伝えて共有する幸せを隼人さんは教えてくれた。
そんなの、本当に小さな幸せかもしれないけれど、私にとっては最高の幸せ。人と共に生きる幸せ。
心もお腹も温まってお店出ると、もう日は傾き始めていた。