憂鬱なソネット
「………まさか。


ブログもツイッターも分からないとか、言うんじゃないでしょうね………。


インターネットの話ですよ、インターネットの!!」






あたしはとうとう声を荒げてしまったけど、寅吉は納得したように頷いた。






「あぁ、なるほど、パソコンの話でしたか。


すみません、俺、昔から、電気関係のことには疎くて………」






「電気関係??」







寅吉がのっそりと頷き、電気苦手トークをはじめた。







「ええ、電気を使って動かすものは、全般的に苦手で。


電池もちょっとつらいんですよね。

なので、電池を使うものは身につけないし、極力家にも置かないようにしてるんです」






電池を使うもので、身につけるものなんてあるか??




あたしはちょっと考えこんでから、はた、と気づいた。



寅吉の手首には、腕時計がついていないのだ。






「え、まさか、時計とか………」






あたしが独り言のように呟くと、寅吉はすこし目を瞠って、「よくわかりますね」と言った。






「そうなんですよ。俺、時計って、どうしてもだめなんです。


なんていうか、時計をつけているほうの腕が、だんだん重くなって、だるくなって、動かなくなっちゃう気がするんですよね。


それに、時計があると時間が気になっちゃって息苦しいので、家にも時計を置いてないんです」







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