憂鬱なソネット
突然の土下座にみんなが目を瞠っているけど、あたしからしたら慣れたものだ。



寅吉は最初の出会いーーーお見合いのときにも、高級ホテルのラウンジのど真ん中で土下座をしたから。



でも、チャペルのど真ん中で土下座というのは、さらにシュールな映像だ。




「………もういいよ。

こんなんじゃ全然先に進まないし。

指輪交換は、やめ、やめ」



「え………いいの?」



「また痩せたときにつけてよ。

今日はこれで十分だし」




あたしは右手に握りしめていたダイヤモンドの原石を見て、そう言った。




ドレスはきついしハイヒールは痛いし、もうほんと、そろそろ終わりにしたい。




「さぁ、神父さん、さっさと次に行きましょう」




振り向いて先を促すと、神父さんははっと我に返ったような顔で、



「………えー、それでは、誓いのキスを」



と言った。



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