この思いを迷宮に捧ぐ
千砂の問いかけに、困ったように彩菜は曖昧に首を傾げて、俯いた。そんな妹の様子を見て、くすりと晁登が笑う。


「黄生くんに、もらったんだろう」

「まあ…」

あの弟が、手ずから花を摘んだかと思うと、彩菜への関心が深いことが、千砂にも知れた。

目立たない小さな花で、売るような華やかな花ではなく、野の花なのだ。宮殿の庭の片隅に自生している。

香りが優しいが、茎が頑丈で、摘むというより刈るという作業が面倒はなずだ。

これまでの黄生なら、豪華な花束を花屋にオーダーしたり、気まぐれに温室の貴重な花を手折ったりしたのに。

彩菜には迷惑かもしれないが、千砂は黄生がまともな考えを持って行動するようになったように思えて、胸の奥が温かくなった。



「私、片づけを手伝ってまいりますので」

小さいが、きっぱりとした声でそう言って、彩菜は慌てて舞台の方へと出て行った。


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