この思いを迷宮に捧ぐ
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議場は、疲れた気配に沈んでいる。

保健大臣が、例の流行病の件で、診療費等を水増しし、差額を着服していることが明らかになったからだ。

そして、そんな一大事の直後にも関わらず、翌日千砂が臨時招集をかけたせいだ。



「以前から火の国との国境で小競り合いがあったのではないかと?」

鋭さを感じさせる眼つきで、国軍大臣が千砂を見上げる。

「知りませんなあ…」

そう続けながら、しらじらしく首をかしげる男に、千砂は苛立ち始める。

「慰問先の村々でそのように聞いています。配備された第2軍隊から報告があってしかるべきではないですか」

千砂が追及すると、国軍大臣は仕方なさそうに答える。

「まあ、次の機会には訊ねておきましょう」

これで終わりとばかりに演台から離れようとする国軍大臣に、言葉をかける。


「いえ、その必要はありません。証人をここへ」

千砂が冷たい声音で告げると、一人の兵が議場へ入ってきた。その姿に、はっとした国軍大臣の顔つきを見て、千砂はまた落胆するのだ。

あなたもそうなのか、と。

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