この思いを迷宮に捧ぐ
「彼は、第2軍隊長です。私の一存で、急遽招集したため、皆様に事前の相談がなかったことをお詫びいたします。彼に、いくつか質問をしても?」

議場は静まり返っている。

反対の声がないことを賛成と解釈して、千砂は兵士に向き直る。

「はじめに、火の国から武装した集団が侵入したのはいつですか」

「去年の夏です」

目をそらさずにきっぱりと答える軍隊長に、あたりがざわついた。

「それを、上司に報告しましたか」

「はい。当日の内に、文書を使者に持たせました。記録もあります」

「その時は、第2軍隊だけで撃退したのですね」

「はい。ただ、越えてきた国境線の位置が、明らかにこちらの手薄なところを狙った様子だったため、危機感を強く持ちました。そのため、かなり強い警告のつもりで報告をしました」

「現場で指揮を執るあなたがそう感じたにもかかわらず、宮殿にいる私が火の国を拠点とするその武装集団について知りえたのは、先月の大きな被害が出たときが初めてです。おそらく、この場の出席者の多くもそうでしょう」

千砂がちらりとあたりに視線を向けると、驚いた顔が多いのも確かなのだ。


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