この思いを迷宮に捧ぐ
「近頃、重要な情報が故意に遮断されている印象を受けますが」


そこで言葉を区切ってみると、静寂に満ちた議場に緊張感が生まれる気がするが、その発生源を特定することはできない。


「少なくともこの件について、あなた自身は情報を所持していたのではありませんか、国軍大臣」



心に生まれる冷たい炎に、千砂は身が焦げるような気がする。

千砂が高い席から見下ろしていても、もはや視線を合わせようとしない国軍大臣は、全身にたっぷりと脂肪を纏っていて、このつつましい国では異質の体型だ。


「火の国の武装集団と、どのような取引を?」


「わ、わたしは…!」

咄嗟に反論しようと顔を上げた国軍大臣に、危機感を強め、千砂は宣告する。


「もう一人、証人を呼びましょうか。地下牢に収監されている、かの集団の頭領を」


その一言は千砂にとっても賭けだった。

火の国の武装集団の頭領は、頑として口を割らないと言う。いまだに自分自身の名前すら語らないと聞いている。


「申し訳ありません…!!」



国軍大臣が崩れ落ちるように足元に蹲り、議場は騒然となった。



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