この思いを迷宮に捧ぐ
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「ち、…千砂!?」
気が付いたら、晁登の驚く顔が目の前にあった。
「入って」
周囲を伺いながら、晁登は急いで千砂を楽屋に招き入れた。
夜更けての突然の訪問である上に、いつもくっついて離れない坡留の姿が見当たらないのが、やはりおかしかった。
「どうして…」
珍しく暗い楽屋の景色に、千砂は思わずそう溢す。
「ん?何が?」
晁登が困ったような顔のまま、優しく促すから、千砂は続けるしかない。
「どうして私、ここに?」
こっそり来るつもりもなかったから、フードもベールも被っていないし、当然髪をとかしたりなんてしていない。
その迷子の少女のような千砂に、晁登は思わず笑みを溢す。晁登も、別れ際の千砂の様子から、ずっと彼女のことを案じていたのだ。
「きっと俺に会いに来てくれたんだろうね」
晁登が抱き締めてくれるから、千砂は解離して見失いそうなもう一人の自分が戻ってきてひとつになれた気がした。
「うん。会いに来たの」
その時、隣室から声がして、千砂は硬直した。