この思いを迷宮に捧ぐ
「兄たちがそれをつなぎあわせているところなのに」

彩菜は、迷った挙げ句、仕方なく言葉を吐き出した。

「それを、殿下は力いっぱい揺さぶるのです」

上手い表現だと、千砂は思う。黄生の無神経さがよくわかる。

「心が揺れるんだね?」

そこには触れることなく、クスクスと楽し気に黄生が笑う。

「違います」

彩菜が冷たく言い返すのに、黄生は怯まない。


「そんなに真っ赤になる彩菜が好きだよ」
「見間違いです」
「かーわいい」
「かわいくありません」

「彩菜はかわいいよ。誰が何て言っても。もちろん彩菜がどれだけ否定しても、僕は彩菜がかわいい」

とうとう言葉を失ったらしく、彩菜の声は、聞こえない。



「彩菜、僕のお嫁さんになってよ」


畳みかける黄生の声が、いつになく真面目で、千砂はどきりとした。

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