この思いを迷宮に捧ぐ
「いいよ。また作るから」

「おいしかった。どうやって作るの?」

「劇団員の誰かが買ってきたティーバッグを使っただけだ。水がいいのかもしれない。ここへ来てから、彩菜が水甕で表の井戸の水を汲んでくるようになったから」


「……そう」

千砂の俯いた顔が、明度の低い空間の中で逆光になって、晁登には見えない。

ただ、その暗い声に、思わず彼女の方へ手を伸ばした時だった。


「なんだか、頭痛がひどくなってきたみたい。宮に戻ります」


「……送ろう」

晁登は、まだ千砂と過ごす時間があるものだと思い込んでいただけに、珍しく落ち込んだ。だけど、頭痛持ちの彼女の症状が悪化したならば、我慢するほかはない。



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