この思いを迷宮に捧ぐ
何でもない顔つきで、頬杖をついて、水槽を見ている翠は、大騒ぎになった広間の中で、ただ一人、いつも通りの空間に残っているかのように見えた。

千砂は、そんな翠を眺めながら考えた。黄生が姿を消し、汚職をいくらか払拭し、適当な後ろ盾のある夫を迎えても、まだ危険因子が残っているのだろう。


いつになれば、私は、その危険因子を全て排除することができるのだろう。


今回の騒ぎも、姿の見えない彼らにとっては、翠やその一族のお手並み拝見、と言ったところなのだろうか。



千砂は、何とか混乱する場を収め、酒宴も中止して、招待客を見送ることとなった。


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水の国からは、国王と青英が出席していたが、千砂は今日きちんと対面するのは、この見送りが初めてになってしまった。


「兄貴」

発言した青英は、明らかに翠を見ていたが、千砂は何かの言葉を聞き間違えたのだと思った。

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