この思いを迷宮に捧ぐ
「叔父さんと呼べ」

隣に立っていた水の国の国王は、無表情でそう言い、先に部屋を出て行ってしまった。

「親父、地味に不機嫌になったぞ」

翠が笑って青英の肩を叩くのを、千砂はきょとんとして見ていた。

「だって兄貴だろうが」

言い返す青英を置いて、翠はそのまま国王の後を追ったから、千砂はますます困惑する。


「青英様が、追いかけなくてもいいのですか」

口を挟むべきではないのかもしれないと、多少は迷ったものの、声をかけることにした。

「千砂も知らなかっただろう」

それはやはり、翠が、国王の子であることを言いたいのだろうと、千砂も察する。

「俺よりも翠の方が、国王と親子らしい関係を築いてる」

今、翠が公式には、前国王の養子とされているならば、大っぴらにできない事情があっただろうに。

確かに、国王に追い付いて、言葉を交わす翠には遠慮がなく、よほど青英との間の方が壁を感じさせた。

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