この思いを迷宮に捧ぐ
「国王は、翠の母親だけを愛しているから」
義兄の口調からは、非難も怒りも感じられず、ごく淡々とした印象を受けるだけだ。
千砂は、今夜は珍しく水の国の国王が、この宮殿に宿泊することになった理由を、初めて理解した。
彼は、義母に会いたかったのだ。
「だから、翠は、散々嫌な目にも遭ってるが、意外にまともだ。両親は互いを決して忘れることはないし、間に授かった子どもである翠のことは、当然大切に思ってる」
この人は、どれほど自分を強く保つことができるのだろうと、千砂は青英の瞳を覗く。
そこに傷はないように見えて、自分もこうありたいと、強く憧れた。
「だから、見た目よりは、信用していい」
はっとしたときには、青英はすでに真っ黒なマントを翻していた。
不器用な人だ。だけど、そんな優しい言葉を、気持ちの欠片分でも口にできるようになったのは、そしてそうやって急いで帰るのは、水の国で待つ朱理のおかげだろう。
義兄の口調からは、非難も怒りも感じられず、ごく淡々とした印象を受けるだけだ。
千砂は、今夜は珍しく水の国の国王が、この宮殿に宿泊することになった理由を、初めて理解した。
彼は、義母に会いたかったのだ。
「だから、翠は、散々嫌な目にも遭ってるが、意外にまともだ。両親は互いを決して忘れることはないし、間に授かった子どもである翠のことは、当然大切に思ってる」
この人は、どれほど自分を強く保つことができるのだろうと、千砂は青英の瞳を覗く。
そこに傷はないように見えて、自分もこうありたいと、強く憧れた。
「だから、見た目よりは、信用していい」
はっとしたときには、青英はすでに真っ黒なマントを翻していた。
不器用な人だ。だけど、そんな優しい言葉を、気持ちの欠片分でも口にできるようになったのは、そしてそうやって急いで帰るのは、水の国で待つ朱理のおかげだろう。