この思いを迷宮に捧ぐ
姉は、最後まで、この人に心底愛されることはなかった。

国王に愛されているという翠の母親は、今はこの宮殿にいて、国王の傍にいることが叶わない。

かといって、水の国の王妃も、国王の心を手に入れることができない。

そして私も、恋い焦がれた彼と、離れるしかなかった。



千砂はそこまで考えて、身動きが取れなくなってしまった。


どうして人を好きだと思う気持ちは、ねじれたり途切れたり逸れたりしてしまうのだろう。
誰も彼も、意に沿わない相手といることになる。

一見華やかに見える王族には、こんな呪いがかかっているのだ。想う人とは結ばれない、という呪いが。


「中座するよ」

腕を引かれていることに気が付いたときには、いつの間にか広間を出て、すでに長い廊下も終わりに近くなっていた。

「…え?」

私が中座してしまって、一体どうやってこの宴に幕を引くことができるというのだろう。

千砂はようやく我に返って、自分を引きずっていた翠の腕を振り払った。
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