この思いを迷宮に捧ぐ
「戻らなくては」

翠を睨むが、彼は一向に気にする様子もなく首をかしげた。

「あんた、今行くと何か失敗しそうだけど」

ああ、嫌な男。

確かに、疲れて集中力は落ちているし、毒だって飲みかけたのだから、何か別の罠に引っかからないとも限らない。

翠の意図を理解すると、ため息をついて、その場で頭を冷やすしかなかった。


「青英、いい奴だろ」

翠が、思い出したかのようにそう言うと、千砂も頷いた。不器用だが、根はいい人なのだと思う。

「小さい頃から知っていたの?」

異母兄弟ではあるものの、一方的とは言え母親同士の間にある諍いを、全く感じさせない親しさを、二人からは感じることができる。

「親父が時々連れて来た」

国王を、何を考えているのかわからない人だと思ってはいたが、やはり理解しがたいと、千砂は驚いた。

「よく愛人の家に、本妻の息子を連れて来れるよな。神経を疑う」

外野の千砂以上の表現を使うから、千砂は苦笑いするしかない。

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