この思いを迷宮に捧ぐ
「あんたも王族なんだから、わかるだろ?後継者がいかに大事なもんか」

「わかります。しかし、それとこれとは」

「違わない。配偶者じゃなく、身分の低い恋人の子なんか、役に立たないよ?」

千砂はズキッと鋭く胸がえぐられるような気がした。


翠が、意図して晁登のことを指しているはずはない。晁登が国を去ってから、翠がここに来たのだから。

「小狡い馬鹿どもに上手く利用されて、下手したら暗殺されるかもな」

暗殺、というキーワードに、千砂は思わず言い返してしまう。

「誰のことを言ってるの?」

別れを決意するきっかけとなった騒動を回想しながら、千砂は翠を睨み付けた。やはり、まるで晁登を知っているかのような口ぶりに聞えるからだ。

「さあ?誰のことだろう」

その精巧な人形のような顔に浮かぶのが、自嘲にしか見えなくて、千砂は言葉をなくす。
確か、青英は、彼を異母兄といったはず。

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