この思いを迷宮に捧ぐ
いや、俺だってわかってんのか。
じゃあなんだよ、この態度の違いは。
ドキンドキンと鼓動音がこだまする頭で、ぐるぐると翠の考えは回る。
「...今晩はここにいる。心配いらないから、暖かくしてぐっすり眠れ」
これだけ人格が変わるくらいぼんやりしてるなら、どうせ今のこの時間の記憶なんかほとんどないだろう。そう思えば、翠は、いくらか気が楽になって、素直な言葉をかけた。
冷えきった髪を撫でてやると、千砂が頬を緩めたから、翠ははっとした。
笑った?
「仮面のクイーン」が?
時折見せるわずかな笑みではなかった。
無防備で、無垢な笑み。