この思いを迷宮に捧ぐ
「遠目には合格でしょ」
確かに、審議官側から見れば、唇にキスをしたように見えそうだ。
千砂は、翠がこういうときも冷静なのは、いくつもの修羅場を掻い潜ってきたせいなのだろうかと考えてみる。
「しつこいな」
困惑したような翠の声に、はっとして千砂は腕をほどいた。自分がまだ翠の首にしがみついていることに気が付いたのだ。
「バカ。あんたじゃないって。あいつら、まだ疑ってんのに何やってんだか」
確かに、審議官たちはひそひそ耳打ちをし合っていて、立ち去る気配はない。