この思いを迷宮に捧ぐ
わかってはいたけれど、ふいに千砂の口からはっきり言われると、翠はこたえた。

「知ってるよ。でも、あんたが嫌いなのは、岳杜やその叔父だ」

翠は、男と一括りにして嫌うのは、やはりおかしいと言いたくなる。 そんな翠の言葉によって、千砂は、思い出さないように努めていた彼らの顔が浮かんできた。


「それに、好きな男だって一人や二人はいただろ」

確執のある岳杜やその叔父以上に、今は思い出したくない晁登の顔が、はっきり思い出されて、千砂は息が苦しくなる。


「好きになったら、なおさら辛い。嫌いなだけの方が、いっそ楽だった」

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