この思いを迷宮に捧ぐ

千砂の男嫌いの原因には、岳杜とその伯父との確執だけでなく、晁登を諦めるしかなかったことも上乗せされていたのだと、翠は今更理解する。

千砂の心には深い傷がふたつあるのだ。


「っ」

一瞬の静けさにも堪えられないと言うかように、千砂が唇を探して背伸びをしたから、翠は思わず息を飲む。

もう手遅れた。今更引き返すことなどできない。翠は後悔するのをやめた。


だって。
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