この思いを迷宮に捧ぐ

こんな顔で。
そんな仕草で。
勝手にずきんずきんと痛み始める胸に、翠は腹が立ってくる。

いつもの「仮面」はどうしたんだよ、と言いたくなる。愛想のひとつも振り撒けない、クールな女王はどこに行った。

そんな「イイ顔」すんな、と強く反発を感じるのに、翠はもう引き返せなかった。


千砂の方にしても、これは晁登じゃないと、頭の中で理解はできているはずなのに、どうしようもなかった。

いつか、翠が、千砂の顔立ちに美砂を見たように、今は千砂が、翠の声に晁登を感じているのだ。
思い出すまいと蓋をしていた記憶が一気に蘇って、千砂はひどい混乱の中にあった。
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