この思いを迷宮に捧ぐ
あれからも、翠はあの晩の千砂の動揺ぶりについて、キツい指摘をしたりからったりすることはなく、千砂は安堵した。
翠は、晃登ではないのだ。
千砂だってそんなことくらいはわかっている。
翠の声の質だって晃登とは違うけれど、話し方なのか発声なのか、あのときはたまたまうまく似せられただけのこと。
晃登をあまり思い出さないようにしているうちは、まだ強い未練が残るのかもしれない。
だから、不意に思い出したときの衝撃が大きすぎたのだろうか。
あれから、見て見ぬふりをやめて、千砂はときどき、翠と晃登を比べてみる。
「・・・何?」