この思いを迷宮に捧ぐ


なのに、今になって、なんであんなに泣いてしまったのだろう。

結婚相手に対する、表向きの条件は国益になることだったけれど、裏側の千砂だけの密かな条件は、簡単には死なない人、自分が心を動かされない人というふたつの条件があった。

翠は、表の条件はもちろんクリア。

幼い頃から水の国で女王に付け狙われていたせいで、毒や、人間の悪意を感知するのが得意だ。裏の一つ目の条件にはぴったり当てはまる。

ここへ来て、思っていたのと別の意味で、翠が千砂の心を揺さぶるようになってきた気がしてならない。恋愛感情を持ちたくないというのが元の意味だが、それとは関係なく、千砂の心の層を少しずつ内側に入り込んできているように思えるのだ。
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