この思いを迷宮に捧ぐ
ひょいと簡単に見つけることのできた美砂とは違って、千砂は体力も精神力も使い果たしてしまうことが多い。



どうして、姉さんを女王にしてくれなかったの。

何度となく、死んだ父に問いかける台詞。



父が死んだ直後の騒動で、千砂以上に推薦の声が多かったのは水の国に嫁いだ美砂だったのだから。

美砂は、父のように人あたりがよく、母のように大らかだった。


こんなふうに国を混乱に陥れることもなく、敵さえ味方に変えて、うまく乗り切ったのではないか。


それならば、死んでしまう前に、姉さんを国に呼び戻して後継者に指名しておけばよかったのに。



そんなことばかり考えていたから、千砂は背後への注意をすっかり怠っていた。


―――口を塞がれた!

千砂が気付いたときには、すでに体の自由が失われた後だった。


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