この思いを迷宮に捧ぐ
自ずと、声が硬くなるのを、千砂は自分でも感じた。

岳杜は、静かに目をそらした。その仕草に、千砂の心の底の古傷がずきずきと痛み出す。


気まずい時は、心苦しい時には、見ないふり、知らないふりをする人だった。

優しいのだけれど、優しすぎて、直視することはもちろん、ごまかすことも切り捨てることもできない人だ。


岳杜がこういう顔つきをすると、自分まで子供の頃に戻ったような錯覚に陥って、千砂はわずかに混乱した。



「へえ。まさか、こんなところで謁見できるなんて」


聞き覚えのない声が聞こえたと思ったら、すでに背後から羽交い絞めにされていた。千砂は、足元から上がってくる震えを必死に消そうとする。

ああ、気持ちが悪い。

息が苦しい。


「暗闇でもお美しい、女王陛下。ごきげんよう」


耳元で響く言葉に、身の毛がよだつ。

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