この思いを迷宮に捧ぐ
小さな寝息を立て始めていたはずの千砂が、かすれた声をあげて、ベッドの反対側に手を伸ばしている。
もう、その上寝付きが悪いんだからな。ほんと迷惑だ。
そう思いながらも、翠はベッドに行って手を握ってやるしかない。
まだ、千砂はどこか安心し切れていない。
一人にするとすぐ目が覚めるのは、寒いからだけではないのかもしれないと思う。
自分がいることで眠れるというのは、その点ではそれだけ信用され始めているのだろう。
千砂の体を変な目で見ないと言ったときの、安心した彼女の顔を思い出すと、やっぱりうかつに手出しはできないと思い直す。