この思いを迷宮に捧ぐ
ふたりの印象や相性が良さそうならば、しばらく後に正式に婚約の運びになるし、そうでない場合はそれきりの付き合いになるのだという。


「次の新月の晩、千砂の乳母とともに、千砂の部屋を訪れてはくれないか」

陛下から直々に、あの温かな目で問いかけられて、僕は無意識のうちに「はい」と呟いていた。

後で、両親が、相手が美砂でないことを不満げに話しているのを聞いたけれど、僕は全くそんな風に考えなかった。

華やかな美砂の後ろで、いつも控えめな君を、ずっと目で追っていたから。



古くは王族の血筋をくむ家系だと言い伝えられてはいるものの、そんなことはきちんと書物で証拠立てることさえできないほどの遠い関係。

その末裔である僕を、まさか、国王陛下が目に留めて下さるとは。



幸運に感謝し、そわそわしながら、新月の晩をただただ待った。

そして、その当日、待てど暮らせど千砂の乳母は姿を見せなかった。

しびれを切らした父が、僕を乳母の家へ行かせたのは、今思えば間違いだったのかもしれない。



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