この思いを迷宮に捧ぐ
坡留がカウンターに向かうのについていきながら、千砂はもう一度店内をぐるりと見渡した。
こういう人の多い場所に、翠がいるイメージがなくて、不思議な気持ちがする。
でも、昼間、沿道でちらりと見かけた翠の後ろ姿は、風の国の民らしくターバンを巻いていた。この数ヵ月で、すっかりこちらに馴染んでしまっているのかもしれない。
「それらしい男性が二階にいるそうです。ここの客から持ち込まれる相談に応じて仕事をしているとか」
こちらに戻ってくる坡留に、なぜか店員までついてくる。
「今も来客中らしいのですが、緊急だから会わせてくれと頼みました」