この思いを迷宮に捧ぐ
こくりと頷いたものの、千砂は店内の喧騒にも気圧されて落ち着かない気持ちでいる。
翠が仕事をしている。千砂は、それを想像してみたけれど、うまくいかなかった。
宮殿では、いつも気怠そうで、時々千砂の執務を補助したり、会議や視察についてくるくらいだったから。
それでも、何の縁もないこの国に来て、すでに生計を立てられていることが驚きで、そしてさらには千砂を傷つけた。
それは、宮殿にすぐには戻る気がないという翠の気持ちを表しているように思える。
「葵。急ぎで会いたいって客が来てる」