この思いを迷宮に捧ぐ
直後には取り乱したし、数多くの間違いや悪意が生んだあの結果を、呪ったこともあった。


父は、千砂の淡い好意に気がついて、岳杜を選んでくれたのだろうか。

あれから、何か問いたげな父の視線を振り切って、千砂は幾日も部屋に引きこもった。


でも、関係した人間全てが何年もの間、沈黙を守り、私自身も事実をただ事実として、認めることだけは苦痛でなくなったはずではなかったか。

辛いからこそ、千砂は何度もあの夜のことを思い出して、ひたすらに耐えたのだ。



あの晩、千砂の部屋に乳母が連れて来たのは、岳杜の叔父に当たる男性だった。

伝統的な儀式通りに運ぶならば、相手が誰かを事前に本人に知らされることはないし、異議を唱える機会が与えられることもないのだから、千砂はただ彼を受け入れるしかなかった。

だけど、彼のその異様な焦りは、千砂の恐怖を煽り、異性への嫌悪感を植え付けることとなる。


それだけならまだしも、直後に部屋を訪れた、坡留と岳杜の様子から、全てが何かの策略によってすり替えられものだと、千砂は思い知らされたのだ。

あのときの、岳杜の悲しみに満ちた目が、今でも千砂は怖い。


あの瞬間まで、騙されていることに気がつかなかった自分を、哀れんでいるのではないか。いや、もしかしたら、軽蔑しているのかもしれない。



…だから、男は嫌い。


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