この思いを迷宮に捧ぐ
「無理を言ってすみません」

ぺこりと頭を下げると、坡留に「これを」と何かを預けた。

困った顔で、坡留が歩み寄るその手を見ると、年末に、貴石を納めて各国の主賓宛に贈った箱だった。


「大切な資源でしょう?この前も、親戚が、あ、いや、首相が宝石をいただいたって言ってたし…。綺麗だから、タダで持ち帰ると風の国では遠慮なくみんなが取り合うだろうし、ちゃんと商人を通じて売ったりしてもらえないかと思って」

驚いて風汰を見やると、彼は気まずそうな表情を浮かべた。

「あー、その、失礼になるといけないんだけど…、いや、かえって失礼になったかな」

その素直な独白が、温かい目で朱理を見つめていた時の風汰の印象と少しも違わなくて、千砂は思わず微笑みを漏らした。


「いいえ。お心遣い、感謝致します。これからも、我が国をよろしくお願いいたします」



ただでさえ、人の集まる場は苦手なのだ。

千砂は、風汰が姿を消した後、何か手落ちがないかと思案し続ける。

資料に、段取り、そして、集まるメンバーの顔と名前に経歴。それ以外にも、警備に気を配ることも重要だ。

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