この思いを迷宮に捧ぐ
悪寒どころか嫌悪感もない。

むしろ、この、これまでにない高揚感はなんだろう。

男なのに、晁登は特別なのだ。


はぁ、とどちらのものかわからない熱い息が漏れて、その呼吸音を聞いた耳までも痺れそうだ。

腰と後頭部に回された晁登の手が、いつの間にか熱くなっていることに、千砂は安堵する。

この理屈に合わない体温の上昇が、自分だけの現象ではなかったのだと。


柔らかく繰り返し触れる晁登の唇の感触のせいで、蕩けるように千砂の唇が自然に緩んだら、もう晁登は歯止めが利かなくなった。

彼女が一国の女王であることも、自分が罪人であることも、ここが牢であることも、何もかも忘れた。



「そんな泣きそうな顔、初めて見たよ」

どのくらい長く、深く口付けたのだろうか。千砂はぼんやりする意識のままで、いつからか自分が晁登の胸に両手でしがみ付いていたことを知る。


「本当は、怖い」


久しぶりで、しかも初めての好きな男とのキスで、思考回路が混線していなければ、そんなことを口にするはずもなかったが。
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