この思いを迷宮に捧ぐ
「何が怖いの」

千砂の初めての弱音を、むしろ愛しむように、晁登が受け止める。

「何もかも。女王であることも、この国が混迷を極めていることも、あの男がこの世にまだ存在することも、あの男を刺すあなたも、そして、あの男を追い詰めることができるかもしれない自分も」

一気にそうまくし立てた千砂は、そこで言葉を失う。


変わらない温かな目で、まだ晁登が千砂を見つめているから。

「うん」

そこに、千砂を否定する色は全く浮かんでいない。



「あなたを、好きになることも」



言ってはいけないと、思う暇もないくらいに、千砂は強い衝動に突き動かされて囁いていた。
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