この思いを迷宮に捧ぐ
「怖がりなんだね」

ふわりと微笑む晁登に、怯えながらも千砂は見惚れた。

こんな臆病な面があることを知られてしまった。正義の女神とは程遠い姿に、晁登は興味を失うだろう。


「でも、俺を好きになることは、怖くないはずだけど」

むしろ、それが一番怖いかもしれないのにと言う言葉が出ずに、千砂はこくんと息を呑んだ。

何の覚悟もできてなかった。その上、予兆すらなかった。


「俺はとっくに君を好きだったんだから」


千砂の澄んだ美しい薄茶色の瞳が、大きく見開かれる。

「気が付かないんだね」

くすくすと笑う晁登も、まさか千砂の方から気持ちを打ち明けられるとは、予想できなかった。だから、ひょっとしたら全てが自分の夢の中の世界なのかもしれないとひそかに考えているのだった。


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