この思いを迷宮に捧ぐ
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拘束されている間、物を食べなかったらしい晁登は、しばらく自宅で療養することになった。

千砂は、その頑固さに呆れるが、それと同時に愛しい気持ちが溢れて来て、数日の後には、どうしても彼に会いたくなった。



「…どちらへ?」


もうすぐで敷地最後の門と言うところで、背後から
坡留の声がして、千砂は硬直した。

「町へ」

短く答えたものの、坡留の方を振り向くことができない。


「行き先以上に、私に黙って行くことが許せません」

ぷりぷりしながら坡留がふいに千砂の手を取った。

捕まってしまった。もう外へは出られないんだ、と千砂が失望しかけたその時、そのまま坡留が別の方向へ走りだしたから、千砂はびっくりした。

「抜け道は私の方が詳しいですよ、陛下」

その顔は困ったような笑顔で、千砂は昔こうして彼女と遊んだことを思い出した。

手と手を取り合って、ふたりで走り回るなんて、何年振りだろう。


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