この思いを迷宮に捧ぐ
「晁登さんに、会いに来ました」


そう答えるのが精いっぱいで、国の乱れが、彼女を傷つける出来事を生んだのだと思うと、千砂はぐさぐさと胸を刺されるような気がした。

何の表情も見せず、言葉一つ残さずに、彼女がドアの向こうに消えても、千砂はまだ胸の痛みに耐えているところだった。


「千砂!?」


気が付いた時には、晁登に抱きすくめられていた。

「夢かと思った!!」



私だって、夢かと思う。

千砂はそう小さく呟いた。


あなたに会えるまでの、国のごたごたした汚い空気も。そして、こうしてあなたに会えた奇跡も。

どれもこれも夢かと思う。



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