この思いを迷宮に捧ぐ
好きな男と一緒にいる時、世の中の女はどうしているものなのだろう。

何を話すんだろう。どこを見て?どんな表情で?

だいたい、この姿、女王だと知られないように気をつけて飛び出して来たせいで、みっともないかもしれない。

まさか、こんなに晁登の近くに行けるなんて思ってもみなかった。


本来、思いを寄せる相手の前では、多少なりとも実物以上に綺麗に見えるように気をつけるべきだったんじゃないだろうか。

結婚前、青英が宮殿に来る日には、ずいぶんと気合を入れてめかしこんでいた姉を思い出す。自意識過剰だと笑ったのは、間違いだったのかもしれないと、今更思う。

あれが、好きな男に会うときの、女のまっとうな考えだなんて。


あまりにも、恋というものを知らな過ぎた自分に、今更ながら後悔の念が募る。



「疲れた?」

千砂が我に返ると、晁登が熱いお茶を淹れたカップをことりとテーブルに置くところだった。

うんと頷いて見せて、千砂は思っていた以上に、自分が疲労していたことに気が付く。

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