この思いを迷宮に捧ぐ
「ありがとう。いただきます」
いい香りのするお茶は、千砂の体を温め、ゆっくりと緊張を溶かした。
「来週、煌に復帰するんだ」
晁登は、少し痩せたものの、その瞳は明るさを取り戻していて、確かにまた仕事に戻ってもいい頃合いなのかもしれないと、千砂は思う。
「見に、行きたい」
千砂が思わずそう呟くと、晁登は心底うれしそうににこりと笑った。
「君の嫌いな恋愛ものの公演だけどね」
…確かに、苦手だ。
「脚本家に、歴史ものやミステリーを書いてくれるように頼んでみる」
「え」
「それなら最後まで夢中で見てくれるだろう」
「どうして」
自分の好みを、なぜかすっかりわかっている様子の晁登に、千砂はびっくりした。
「舞台からも、君の姿はよく見えるよ」
「嘘」
千砂が見に行く国立の演劇場は、1万人を収容できるのだ。たったひとりの姿が、演じ手の目に入るわけがない。
いい香りのするお茶は、千砂の体を温め、ゆっくりと緊張を溶かした。
「来週、煌に復帰するんだ」
晁登は、少し痩せたものの、その瞳は明るさを取り戻していて、確かにまた仕事に戻ってもいい頃合いなのかもしれないと、千砂は思う。
「見に、行きたい」
千砂が思わずそう呟くと、晁登は心底うれしそうににこりと笑った。
「君の嫌いな恋愛ものの公演だけどね」
…確かに、苦手だ。
「脚本家に、歴史ものやミステリーを書いてくれるように頼んでみる」
「え」
「それなら最後まで夢中で見てくれるだろう」
「どうして」
自分の好みを、なぜかすっかりわかっている様子の晁登に、千砂はびっくりした。
「舞台からも、君の姿はよく見えるよ」
「嘘」
千砂が見に行く国立の演劇場は、1万人を収容できるのだ。たったひとりの姿が、演じ手の目に入るわけがない。