この思いを迷宮に捧ぐ
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こんなに、観劇の日を待ち遠しく思うのは、子どもの頃以来だ。いや、あのとき以上の気分だ。


「陛下。周囲に気取られませぬよう」

坡留が見かねて声をかけたのは、開演の3時間前だった。

「わかっています」

坡留に感づかれる程度には、浮かれてしまっているらしい。

千砂はそんな自分に呆れつつ、目の前の書類の束に目を通し、サインの必要なものにはペンを走らせ、会うべき人間が訪れたときには言葉を交わした。



終わった!!



開演の30分前、千砂はようやくペンを放り出して、今度は簡単ではあるものの、化粧を直し、髪を梳かすと、演劇場に急いだ。

その姿を微笑ましく見守りながら、坡留は後をついて行った。


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…だめ、心臓に悪い。


確かに、演題は、千砂の苦手なべたべたの恋愛ものだった。
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