この思いを迷宮に捧ぐ
復帰したばかりの晁登は、ヒロインに横恋慕する青年の役どころで、後半に差し掛かったあたりでほんの少し出てくるだけだった。

恋人と喧嘩をして落ち込むヒロインを励ましつつ、言い寄るという、世間でもよくある筋書きの部分だったのだが。


「僕ならば、君を泣かせることなどしない」

晁登の声が響く中、ヒロインが彼の腕におさまる姿は、その画だけでぎゅうっと千砂の心臓を縮める。

「ずっと、君が好きだった」

と、晁登がささやくときには、自分が言われているような錯覚にも陥って、心臓がバクバクした。



必要以上にドキドキした気がする。

千砂は晁登に対面する前から、すっかり疲れてしまっていた。


恋って、なんだかひどい。


なんと形容したらいいのかわからず、千砂はそう呟いていた。
< 79 / 457 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop