この思いを迷宮に捧ぐ
//////////////////

「陛下、そろそろ限界です」

坡瑠の声は、僅かながら苛立ちを含んでいて、千砂もそのボーダーラインから目をそらすことができなくなった。

「そうね」


どこかぼんやりした様子で、千砂がそう認めたら、坡瑠の胸がズキリと痛む。


この人の恋を、応援してあげたいのに。

それ以上に、彼女を傷つけるものから、守りたい。


坡瑠は、このふたつの気持ちを秤にかけて、結論を出したはずだと、自分を諌める。


このまま、千砂が晁登の元に通い続ければ、やがてはふたりの関係が、反対派の知れるところとなるに違いない。

もちろん、国王に恋人がいたっていいのだが、相手が前大臣に重症を負わせた人物だと言うのは、やはり不利だ。

事の真相を知らない人々から見れば、晁登は危険人物であり、それを恩赦で解放した千砂の立場まで危うくなるのは目に見えている。


でも。

晁登の楽屋から出てきて、紅潮していた千砂の頬が、自分の一言で真っ白に戻る様子を目の当たりにすると、坡瑠には小さな迷いが生じる。
< 88 / 457 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop