この思いを迷宮に捧ぐ
近頃の黄生の女遊びは目に余る。相手の女の子の顔を覚える暇がない。

あんな軽い遊びのような恋の相手に選ばれたなら、彩菜の心は一層固く閉ざされることになるだろう。煌が贈賄を拒否したために、彩菜が負ったという傷は、千砂にもまだ全貌がよくわからない。

とにかく彩菜を守りたい一心で、千砂は繰り返した。


「千砂が彼と別れない限り、彼女は巻き込まれるよ」

平然と言ってのける黄生に、千砂はぎくりとする。


「だから、どの道同じことだね」

その目はまだ彩菜の消えた先に向けられていて、千砂はそれが黄生らしくないと、何となく思った。


「つまり、黄生はまだ、彼女に付きまとうつもり?」

「うん」

「どうして?他にたくさん女の子がいるでしょう」

「それは千砂も同じでしょ。彼じゃない男でもいいはずだよ。他国の王家から婿でももらえば?」

ふいに、ドアの向こうにいるはずの、晁登の耳が気になった。

黄生の腕を掴んで引き寄せると、千砂は声を殺して告げた。


「...結婚などしない」

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