この思いを迷宮に捧ぐ
「ふうん。『万事お国のため』って感じの真面目な千砂が、そこだけは無理なんだ?」

くすりと笑って、黄生が柔らかい笑みをスッと消した。


「国にとっても、千砂にとっても損害だ」

はっきりと響く黄生の声は、深く千砂の胸に刺さった。


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「元気がないね」

晁登の声に、千砂ははっと顔を上げた。

いつものように、晁登の楽屋の中だった。

「兄弟喧嘩?」

「...聞こえた?」

「所々ね」


どこの辺りが聞こえたのか、聞くのが怖くて千砂はしげしげと晁登の顔を見つめたが、彼は心配そうな眼差しを向けてくるだけだ。


「あまり会えなくなるかもしれないの」


小さな声で、急いで言った。

認めたくない。従いたくない。言いたくない。そんな、納得の行かない声の数々を押し込めて。

会えなくなるという言葉を噛み締めて、事実として理解しまったら、泣いてしまいそうだった。


「ん...っ」

晁登が、千砂の髪の中に両手を差し入れて、強く口付けていた。

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